『NPO法人代官山ステキ総合研究所』が運営する代官山の「地域ポータルサイト」

【代官山建築エッセイ】03 エジプト大使館

  • 2017年01月28日

代官山ホームページ

 デンマーク大使館を少し西郷山公園の方に向かって歩くとエジプト大使館がある。正式にはエジプト・アラブ共和国連合大使館という。1987年につくられた。旧山手通りからは2階建ての厳格なシンメトリーのファサードだが、あまり大きくないスケールのせいか、大げさに構えているという感じがない。
 この敷地は目黒川に向かって下る急斜面の土地で、大使館は高低差10mの斜面に建てられている。旧山手通りに面して、1階部分にピロティと公式エントランスとレセプションホールがとられ、その上に住宅(大使公邸)が乗っているが、実は4階と5階にあたる。その下に駐車場を含めて、4層分の建築が、半分地中に埋まりながら構成されている。
 大使館の先の旧坂道を左に下るとその全容が分かる。※ 正面とは全くデザインのおもむきが違う。湾曲した壁、3層分の丸柱、段上のテラスと4層分を真直ぐ下る階段などかなり気合いの入ったデザインだ。
 設計は建築家竹山実氏だ。北海道札幌の出身で、早稲田大学からハーバード大学修士を経て建築家として活躍してきた。様々な賞を獲得している。永年、武蔵野美術大学の教授として教えていた。この建築については「新建築」誌1987年6月号に掲載されているが、そのなかで、竹山氏は「旧山手通りに面する正面に、機能的にも形態的にもフォーマリティを与えること。
 「これをわれわれは国旗の掲揚台そのものとすることとしてとらえた」と述べている。
 今回スケッチをしていて分かったのだが、この赤みがかった砂岩のファサードは、かなり厳密に正方形で構成されている。4本の柱で持ち上げられたファサードは6つの正方形で分割され、砂岩は1枚ずつ正方形、柱の頂部、ピロティ下の軒のスクリーンなどに見られる。さらにモチーフは斜面側のデザインにも繰り返し採用されている。「正方形探し」もまたこの建物の楽しみ方の一つだ。
 竹山氏は建築が都市の中でどのように振る舞えば良いのかをよく知っている人だ。アーバンデザインを分かっている人である。それが良く現れているのが氏が基本設計を行なったあの誰でも知っている「SHIBUYA 109(1978年)」である。二叉の道にあって実に効果的にアクター(役者)を演じている。実は竹山氏はそれに先立って新宿に商業ビル「一番館(1968年)」「二番館(1970年)の設計をしている。ちなみに「二番館」のファサードのグラフィックデザインは:粟津潔氏である。当時学生であった私たちはこのポップな建築に出会って、「こんな風に建築をデザインしてもいいんだ」と建築家が街とダイレクトに関わることが出来ることに新しい時代を感じ興奮した。

 山手通りは次々と違った建築が現れる変化のあるシークエンス(連続性)を楽しむ通りだと思っている。そのなかでエジプト大使館の構えた形態に違和感を持っていたのだが、今回、国旗掲揚台の意図を知り、さらに竹山氏を通してポストモダン時代から70年の活力ある建築シーンを顧みることで、親しみをもつものに変わっていった。

※ その坂のお向いの家は美空ひばりの自邸である。今は「美空ひばり記念館」として予約をすれば誰でも訪れることができる。彼女が亡くなったとき数日間その急坂の道が人で埋まっていた光景を覚えている。

(NPO法人代官山ステキ総合研究所 副理事長 元倉眞琴)

NPO法人代官山ステキ総合研究所
ステキ総研団体正会員
ステキ総研が発行する「代官山新聞」
代官山新聞のイメージ
広域代官山の文化地誌と代官山名所旧跡マップ。
代官山ヒルサイドテラス オーナーズウェブ