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【代官山建築エッセイ】01 旧朝倉家住宅と庭園

  • 2016年11月13日
旧朝倉家住宅:代官山ホームページ

 旧山手通り、ヒルサイドテラスの裏に旧朝倉家住宅はある。駐車場の垣根越しに見える少し湾曲した大きな甍の屋根がそれだ。モダンな建築と古い建築を樹々の緑が取り持つという、代官山らしい風景である。ヒルサイドテラスと旧朝倉家住宅、それにデンマーク大使館は元々朝倉家の一体の敷地だった。朝倉家はここで米を扱う豪商であった。この住宅と庭園は大正8年に、当時東京府議会議長を勤めていた3代前の朝倉虎治郎によってつくられた。朝倉家住宅を見るとき、いわゆる家族のための住まいのほかに、商家として、そして公職として人と対応する3つの部門を併せ持った住宅として捉えると理解しやすい。別棟のコンクリート造の蔵や、T型フォードが収まっていた車庫もこの性格を表している。

 かつて経済企画庁の会議所として使われていた旧朝倉家住宅は、平成14年(2002年)小渕内閣の閣議決定によって、売却される危機に直面した。元の持主である朝倉氏とヒルサイドテラスの設計者、槇文彦氏が中心になって保存運動が行なわれた。まず東京大学の建築歴史研究者の鈴木博之教授にどのぐらい価値のあるものかの調査を依頼した。そして「旧朝倉邸と庭園の保存を考える会」を立ち上げ、私も事務局を受け持った。見学会、シンポジウム、関係機関への要望書や署名の提出など素早く運動を展開した。結果として、平成16年(2004年)に「大正の歴史の香りを残す和風住宅として、その庭園とともに価値がある」とされ、国の重要文化財に指定され、保存されることになった。(奈良の長谷寺と一緒に指定されたというのもすごい)渋谷区が管理運営に手を挙げてくれた。多くの保存運動が苦戦している中で貴重な成功例となった。

 しかし1階の当主の居室と仏間であった続間が、会議所時代に洋風に改修されたままであり、復元したいがうまくいかない。また現在朝倉家が保存している掛軸や机や火鉢などの生活用品を展示したいのだけれどこれも進まない。もう少し自由に文化活動に利用したいのだけれど管理上ハードルは高いなど、いくつかの問題がある。  とはいえ、ここは「こんなところにこんな場所が!」と誰でも驚く不思議な場所だ。 もしかしたら樹が全部切られてマンションになっていたかもしれないことを考えると、あのとき頑張っておいて良かったなと改めて思う。「街はみんなで努力をすれば良くすることができるのだ。」

ここでは建物や庭園の内容については触れなかったが、詳細は是非代官山ホームページ」の「ヒルサイドテラスオーナーズサイト」などを見て欲しい。なにより是非訪ねてみて下さい。園内では4月の終わりから5月にかけての躑躅(つつじ)、11月の紅葉が絶品です。大人100円、60才以上無料。午前10時から午後4時30分まで。

(NPO法人代官山ステキ総合研究所 副理事長 元倉眞琴)

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