No.2 デンマーク大使館

代官山建築エッセイ No.2
デンマーク大使館

 旧山手通り、ヒルサイドテラスD棟の隣にデンマーク大使館がある。このお隣同士はとてもしっくりいっている。それもそのはず、設計者はヒルサイドテラスと同じ槇文彦氏である。元々一体の土地でD、E棟の建設に際して売却されたものだが、「槇氏に設計をさせること」という条件をつけて買い手を探したという。デンマークが大使館用地として取得し、槇総合計画事務所が設計をした。なんと素晴らしい話。 1979年に完成、手前が大使館で中庭の奥に大使公邸がある。大使館のファサードは3階建て。D棟に高さをきっちり合わせてある。真直ぐの壁とゆるくカーブした壁で構成されている。曲面を美しく見せるように窓はプロフィリットガラスが使われている。空や周辺の樹々が微妙に映し出されているのに気づく。外壁はややくすんだサーモンピンクのタイル。良く見るとタイルは縞状の凹凸がある。繊細である。

 この不思議な構成は単に変化あるファサードをつくるためにデザインされたものではなく、「アーバンデザインの建築」、つまり都市の周辺の建築や環境や景観を考えてデザインされたものなのである。実は「旧山手通り」はD棟の途中辺りから緩くカーブをしている。真直ぐの壁はヒルサイドテラスと同じ向きでここまでの直線の道を表し、カーブした壁は「道がカーブしてますよ」ということを表している。真向いのヒルサイドテラスを見ると、F棟とG棟は道のカーブに沿って折れ曲がるように配置されている。ここでもやはり建築が道のカーブを表している。

 槇氏はアーバンデザインという視点から建築を追求し続けてきた建築家である。私が師と仰ぎ、学び取ろうとしたのもこのことなのである。

 アーバンデザインの話は、大使館とヒルサイドテラスD棟との間にあるクスノキについてもいえる。この渋谷区の保存樹木に指定された大樹は、2つの敷地の丁度境界のところにある。幹はかろうじてヒルサイド側だが両敷地またがるように大きな枝を広げている。この樹はD棟を設計するときにも、またデンマーク大使館の設計でも、枝を切らないようにデザインの配慮がされてきた。 

 大使館は塀で囲われることが原則なのだが、それではこのクスノキの景観が台無しになってしまう。優れた賢者たちが話し合って今のように大使館の塀を途中で終えて、旧山手通りに対してオープンな空間が用意された。堂々としたクスノキと都市のための空間が実現した。  このクスノキは足下のクリスマスローズも素敵だ。ランドスケープデザイナーの井上洋司さんの提案で植えられた。花は3月初旬だが、今の季節にこの草の名前と緑が似つかわしい。

 「クリスマスローズ」は「ニゲル」という種につけられた名前でヨーロッパでは12月末に花をつける。ここでは3月初旬に咲く。花言葉は〈追憶〉あるいは〈いたわり〉これも感傷的でこの季節に相応しい。  デンマーク大使館のことを建築的に知りたい人は「新建築」1980年3月号、「ヒルサイドテラス+ウエストの世界」槇文彦編著 2006年 鹿島出版会 を見て下さい。  このデンマーク大使館の設計の担当者の一人が、現在ヒルサイドテラスA棟に「山本・堀アーキテクツ」のアトリエを構える山本圭介さんだ。縁というものは繋がってくるものだな。

[公開日] 2016年12月12日

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著者:元倉眞琴

NPO法人代官山ステキ総合研究所・副理事長。建築家。東京藝術大学名誉教授。

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