遠藤利克展―欲動⇔空洞

掲載日:2010年07月30日

1970年代から剛直な彫刻作品をつくり続けている遠藤利克。少年期、地元の仏師に弟子入りして一刀彫を身につけた遠藤は、名古屋市造形芸術短期大学彫刻科の卒業制作において既に、作品の一部に火を放ち、なかば偶然にではあるが供犠のイメージを立ち上げる試みを行っていた。その後、中原佑介のキュレーションによる第10回東京ビエンナーレ『人間と物質』展を愛知で見て、何かが自分の中で動きだしたという。いわゆる「もの派」と同じように物質感を前面に押し出そうとしながらも、遠藤の問題意識は物質の背後にある身体感覚や物語性を追求する方向へと向っていった。一貫して原初的な素材を扱う中で、木を焼いて炭化した作品は、いわば遠藤のトレードマークである。1990年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館、欧米を巡回した『プライマル・スピリット』展でもこれらの彫刻が展観され、日本の戦後現代美術を代表する流れのひとつとして、戸谷茂雄・海老塚耕一らとともに海外の注目を集めた。作家の中で、火で燃やすという行為は、作品を「供犠」としてささげることに通じるという。だからといって最後まで焼いてしまうのではなく途中でやめることにより、火そのものの衝動を人間の生命としてとらえ、人間が生まれたときにもっている未分化のエネルギー(遠藤はこれをTrieb=欲動とよぶ)と連動させて表現する意識が、近年の作品に顕著である。 今回展示される新作「水路」および「空洞説―木の船」「空洞説・2010 AKIYAMA」もその延長上にある。「空洞説・2010 AKIYAMA」において、内側と外側は完全に仕切られ、内部は閉じられた空洞となって外側からは内部がまったく見えない。見るものはその空洞の内側を想像し、意味づけしようとするだろう。 11メートルの長さをもつ木の船は、炭化されて彼岸の世界にむかう死のイメージを喚起させるかもしれない。「水路」もまた、一種の通過儀礼である燃やす行為を経て、この夏作品となった。焼かれたのは新潟県妻有地方、2003年に遠藤が鉄板で大地を区切り、水を封じ込めた常設作品「みえない水」(妻有トリエンナーレ2003)にほど近い場所である。ヒルサイドフォーラムの空間の中でこれらの作品の前に立つとき、我々は眼にうつるものだけでなく、作品に結実した時間の積層そのものをみいだすのではないだろうか。 お問い合わせアートフロントギャラリーTEL:03-3476-4869 担当:近藤・坪井

■タイトル
遠藤利克展―欲動⇔空洞
■開催期間
2010年8月17日(火)-2010年9月5日(日)
■開催時間
11:00-19:00
■休館日

■料金
500円 ※中学生以下無料
■主催
アートフロントギャラリー

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